読書を楽しむ住まい / Living with books

雨の少ない温暖な讃岐平野の住まい。水が湧き出る中庭を中心に、本棚のある空間を巡らして、様々な暮らしの場をつくる。静謐な時間が流れ、好きな書籍に囲まれた中で、読書を楽しむ住環境である。

In this comparatively dry temperate region of north Shikoku, a central courtyard with fountains is surrounded by various kinds of spaces for life, and shelves of books. This house offers a congenial environment to enjoy reading, as time passes quietly by.

 

 

 

木材は全て天然乾燥杉にする。調湿性だけではなく香りやツヤがとても良く、身体の免疫力も高める。自然素材の白い塗り壁も呼吸し、調湿機能が働く。 外壁は焼き杉板を使う。

間接的に入る時とともに変化する自然光によって、大工の手刻みで組んだ柱と梁の杉架構が映し出され、癒しの空間になる。

The naturally dried Japanese cedar, with warm color and luster, like the white plastered walls, not only absorbs or gives out moisture depending on the wet or dry climate, it also improves the natural resistance of the body.

 

 

 

 

床を高くし中庭に空気が流れるようにして、湿気がたまらないようにする。夏は床下に流れる冷気を専用通気口から室内に入れることができる。夏は心地よい風を通わせ、冬は適度な気密と高断熱化していることで暖かさを包む。

The high floor circulates air in and out of the court, bringing in cool air through floor ventilators, opened in summer. In winter, the well-insulated spaces are comfortably warm.

 

 

 

 

自然素材を活かすことで、暮らしの時間が刻まれ、経年変化の美が空間に醸し出される。

With the passing of time, different kinds of natural light flow into the traditionally joined hand built structure. The natural materials age tastefully, creating a place to come back to for rejuvenation of the body, mind and spirit.

太陽光パネルを屋根の風景を乱さないよう配慮して設置し、創エネ住宅にしている。

 

再生住宅・緑のレイヤーで包む住まい / House with Gaia layers

昨年香港で、20カ国あまりが参加するARCASIA(アジア建築家評議会)大会があり、参加する。大会テーマは、「成長と多様性、グリーン時代のアジア」である。様々な講演会や環境、建築の社会的役割と責任、教育、実務などの委員会で活発な議論がなされた。香港の建築見学や毎晩暖かい交流会があり、意義深い経験となる。一昨年のタイ・アユタヤ大会に続いて香港大会、アジアの国々の今日の元気で活発な動向と、それぞれの国の問題や課題が現れ、熱気あふれていた。

acgsa 環境委員会の仲間たち

 

 授賞式で

 授賞式会場からの夕景

ARCASIA建築賞の授賞式があり、参加する。住宅部門で丈六の家“House with Gaia layers”が二席で受賞する。自然との調和とその環境の親和性、地域独自の活性化と持続可能性、文化・歴史性をもった空間の質が評価されたと総評で述べられた。受賞会場は学生時代に利用した空港の跡地を再開発した巨大な船のような連邦クルーズターミナルで行われた。

詳細は2016年9月9日 本Blog参照

See more  / 2016年ARCASIA受賞掲載誌:http://www.architectureasia.co/magazine/2016-03/      p14~15参照

 

This house was renovated in 2002, when it was already 20 years old. A flexible traditional structural frame has been wrapped around an existing rigid timber structural which is further surrounded by a green layer offering various devices for environmental control. The house and greens well cared for, it has aged very well.

Arcasia, “Architects’ Council of Asia” is held every year at one of the roughly 20 Asian member countries. Arcasia Awards for Architecture (AAA) aims to encourage and sustain the Asian spirit.

 

 

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jourokuliving 2016年5月夕刻

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House with Gaia Layers

 

 パーティ会場の超高層から

 Zaha Hadid 設計のデザイン大学

 

農を楽しむ住まい Ⅱ / Living with the Earth – Ⅱ

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大きな屋根で覆われた空間の中は、バナナの木やスポーツ自転車、天井まで届く本棚にいっぱいの本、借りた畑で栽培し採れた雑穀のいろいろな干物、パソコンと向き合う仕事場があり、アフリカの絵画やタペストリー、ハンモックが下がっている。そこは学生が集まりジビエ料理を楽しんだり、ゼミをする場にもなっている。

Dry in the monsoon, the cool concrete floor in summer has turned warm enough in winter for our client to sleep straight on it till early morning. The large tent like roof has a thriving banana tree, jazzy bicycle, tall book-shelves, computers, African tapestry and hammocks. Harvested corn & sesame drying in the entrance veranda, ushers in students for seminars. Though far away geographically, we surely could enjoy a feel of Africa.

 

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naitoh11 雑穀栽培

 

naitoh8 雑穀を干す

 

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遊牧民の家 / House for a Nomad

JIA(日本建築家協会)四国建築賞を受賞する。

この賞は、日本建築家協会の理念に基づき、四国のそれぞれの地域の風土性、社会性、歴史性、文化的文脈が受け継がれ、建築作品や活動に昇華されたものを顕彰すると謳われている。

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アフリカの民族研究をされている建築主が、近代的なプライバシー感覚とは異なる、住まいの多様な機能を包むホリスティックな家に住みたいと計画が始まる。肥沃な吉野川沿いの農業地と大きいな楠がある神社のある風景の中で、その土地の環境や暮らしとつながり、学生が集い、豊かな食生活や仕事を楽しまれている。

Our client specializing in African studies, wanted to do away with the modern concepts of privacy, individualism and space efficiency and live a life close to the land. In a very fertile area, next to an old Shinto shrine lined with huge Camphor tees, well-considered passive design & an insulated concrete floor supports a very active lifestyle in a very wholesome space.

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太陽や風、風景と言った自然の恵みを生かしたパッシブデザインと蓄熱化する黒い土間コンクリートが一年を通じて快適空間をつくっている。地場の杉材を現してしっかり組む空間をつくり、調湿効果のあるいい空気環境ができる。冬は、陽が深く入り、まきストーブの暖かさが蓄熱されるので朝まで続き安らげている。梅雨時期はべとつかなく、炎天下の夏は、2階の小さなエアコン1台で土間床がひんやりして、家に入ると涼しく感じる。住空間が独自で活動的なライフスタイルを支えている。

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再生住宅・コックピットのある家 / House with Cockpit

国内森林資源を活かしカーボンホフセットに取り組んでいる外壁材メーカーのコンペでリフォーム賞をいただく。「形を活かしながら、大きく変えたスケルトン&インフィルの家。親が建てた家、家族に対する思いや気配が残されている。住み継ぐという言葉がふさわしい家である」という審査評。

詳細写真は本ブログ2016年8月13日参照 / Refer 13thAug.2016 Blog

This house received an award in the Reform Category from its wall cladding manufacturing company, which uses Japanese wood as a form of Carbon offsetting.

Jury comment: “The form retained but the space greatly transformed, the spirit of care for family has yet been carried into the next generation in a new context.”

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時間の継承をしながら、内部空間は木造の骨組みを生かし、耐震、断熱、大胆な空間改修を行う。調湿性のある自然素材を塗った壁と天井と、香りが残る自然乾燥した杉厚板の床で空間を包む。広がる田園環境と関係をつくる空間が、食、読書、ピアノ、休息、団らん、六人家族の多彩な暮らしの場を包んでいる。かつての暗くて寒い部屋から心地よい空間になり、人がいつも集まっている。

Continuity in time achieved by retaining the original form, the structural framework is reinforced and enhanced, and a well-insulated large family space has been created. Everyday cooking, dining, conversation and playing the piano is thus linked to the open view in the east through large openings and a deck, hoping for better communication, understanding and encouragement through a closely knit family life.

 

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2016年受賞作 / Award winning projects in 2016

2016年は「コックピットのある家」、「遊牧民の家」、「丈六の家 — House with Gaia Layers」の三つの住宅が建築賞を受賞する。建築主をはじめ工事に携われた関係者の方々、ありがとうございました。それぞれの内容をご紹介します。

We happened to receive 3 awards in 2016 for the following projects.

“House with cockpit”, “House for a nomad” and “House with Gaia layers”

農を楽しむ住まい Ⅰ / Living with the Earth – Ⅰ

住まいは夏を持って旨とすべしという格言があるが、健康、省エネ、快適な室内空間を考える上で、冬の快適性、心地よさをつくることは重要である。

太陽や風、周辺環境、自然素材などを生かし、あらゆる季節の自然の恵みを活かしたパッシブデザインを考えている。この住宅は、野菜、果樹、万葉植物を育てる園芸のある暮らしを楽しみ、季節や時間、天候の変化を味わいながら、心身を元気する住まい空間を目指す。自然と豊かに関わるパッシブデザインからアクティブライフを生む空間である。

 

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南北に長い敷地のほぼ中央に、大きな屋根で空間を覆い建築に陰影を生む。風と視界が南北に抜け、庭と畑の緑を住まいがつなぐ。南北に抜ける一階ガラス戸を全開すると、室内外の空間が一体になるし、農作業の合間で一服できる広々したエンガワ空間である。

切妻の大屋根と外・内部の緩衝空間であるその陰影空間が、太陽高度の高い夏場は、日陰をつくり風を通す。冬は大きな開口部から室内に奥深く暖かい太陽光が入る。住まいの断熱性能を上げ、地場杉材の保温性や調湿性を生かし、森林浴効果をしっかり活かすと、とても良い空気環境が生まれる。冬はまきストーブ、極暑の夏用に小さなエアコン1台設置する。

 

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二層屋根の化粧野地板、天井、床は杉厚板を使い、構造材はすべて現して組み上げる。住空間が周りの自然環境や風景につながるよう、大地と関係づけるよう木造架構の空間をつくる。木材をしっかりと全体で組み上げることで、地震力に対して強い粘りをもつ。

 

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二階は習い事や読書をする場で、そこから庭木や家並みの間から山の風景が眺められる木製テラスの月見台に出られる。

大きな三角屋根で覆われた空間は、屋内に様々な空間スケールの場を生む。

 

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干し柿を吊る

甘柿が大好きな91歳の母と私たちで、庭の熟れた渋柿を剥いて2階テラスに吊り、干し柿にする。干し柿は日本の和菓子の原点と聞く。インドの友人から、柿はインドのチクとマンゴーを足して2で割ったような味だと言われ、変に納得。

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認知症で介護認定3の母が、長年の力を発揮し素早くきれいに皮をむいてくれた。子供や高齢者、異なる世代と一緒に作業すると、味わい深い感動に出くわす。

多世帯で暮らす

少子・高齢化、人口縮減化時代に入り家族の有り様が変わっている。家族各々の価値観やライフスタイルを大切にしたい熟年世代が共に暮らす家をつくる。多彩な家族構成で、これからの暮らしを生む提案である。

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近い将来樹木がしっかり根付き、田園と木立に包まれる。

日々変化する自然との対話、感覚の応答を育む環境を大切にしたい。

 

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各個人の暮らしへの価値観を尊重しながら、共に暮らす楽しさや安心感、家族への思いやりがもてるような空間で、運動能力、感覚機能、心理・精神機能を豊かに働かす住空間を目指す。

テラスを挟んだ個室と広間をつなぐ長い廊下は、様々な緑の風景が楽しめ、バリヤーフリー化した縁側やテラスにも廻ることができる。雨の日でも、長い廊下は格好の心身のリハビリ空間になる。

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世代、国を超えて

幾つかの大学で非常勤講師をする縁をいただいて、多くの様々な学生や先生方と素晴らしい出会いがもて、感謝している。

また、世代や国境の枠を超えて、建築家と交わることは楽しい経験であり、どのような課題や問題意識をもって、頑張られているのか、生で感じ、広い視野で考えさせられる機会になる。

中国福州へのご縁

20年あまり四国大学に通う中で出会った一人、中国人学生の趙君は建築の勉強をしたいと、滋賀県立大学大学院布野研究室に進学し、博士号を取得。現在は中国国立福州大学で准教授をしている。今では建築を学ぶ息子ともつながってどこか嬉しい。

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2014年、福州大学で催された「自然に還る」という建築家の国際シンポジウムに呼ばれた。国際シンポでは日本に留学経験のある中国の先生方とお会いでき、ノルウェーの建築家達とも交流する。インドの旅が話題になったり、北欧現代建築を身近に感じたひと時であった。シンポ後、客家の集落と、保存再生された幾つかの歴史街区や伝統的住居四合院を観る趙君の案内の旅に出た。

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福州の建築・歴史街区と四合院住居

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福州の建築・歴史街区とショップハウス/住居

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福州の建築・寺院

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福州の建築・客家土楼

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どこに行っても独特の作法をもつ美味しいお茶の接待を受ける。

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台湾・宜蘭(イーラン)への旅

2015年夏には、台湾の中原大学からChun-Wei君が当事務所に来て、インターン学生として2ヶ月間、木造建築を学ぶ。偶然長男と同年齢で、家族の一員として暮らす。夏休みには徳島大学の先生の協力を得て、「居住環境と建築を通して見る世界」をテーマにして、友人、知人が集まり国際セミナーをする。Chun-Wei君と帰省した息子が卒業研究を発表し、米国サギノー州立大学から四国大学に来られた建築社会学のウォーレン先生、アフリカ研究をされている内藤先生、インド建築からヴァサンティが発表する。様々な課題を同時並列的に観る貴重な機会になる。

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2015年秋には、彼の先生、黄(ホァン)さんが率いる事務所、フィールドオフィス・アーキテクツを訪ね、メンバーの方々に宜蘭(イーラン)のたくさんの作品を案内していただいた。地域づくりへの挑戦と迫力のある素晴らしい仕事をされていた。

台湾・宜蘭(イーラン)の黄さんとフィールドオフィス・アーキテクツの建築

大規模工場跡地に市民広場が生まれる。

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町を見守る納骨堂群

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まちづくり 住民の技能が発揮する。

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古い施設を生かし再活性化

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町の本屋さん

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駅前広場

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中国・福州と台湾は、沖縄滞在時代から、親近感をもっていた。中国、台湾の歴史的建築を見る度に我が国の木造建築のふるさとを感じる。同時に、急速な巨大社会インフラ、経済開発の中で、木造建築の伝統的技術はほぼ失ったようだ。日本の木造建築の知恵や技術、文化はまだ生きていて、今日の地球規模の課題に正面から向き合える可能性をもっている。東アジアの文化と、森や環境の再生につながる木造建築は、これからとても重要な役割があると想いをもつ。

 

Chun-Wei君は兵役義務を経た後、台湾の都市問題に向き合うために、オランダに留学して都市居住の勉強をするそうだ。

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トルコの友人とシリアの叫び

2015年晩秋、トルコからジャンさんとエメルさんご夫婦が来られた。ジャンさんはドイツで活躍していた建築家、エメルさんは写真家で、四国88箇所巡りをしていて、戦争で荒れた国土を回復するために、日本の地方大学で環境と自然再生の研究をする希望をもたれていた。建築文化話で意気投合し、家族と楽しい数日間を過ごす。シリア、トルコの人々のおかれた状況や政情をとても心配されていた。帰国後、彼は国連UNHCR協会に入り、活動している。

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